2019年11月に竣工を迎えた新国立競技場。しかしその舞台裏では、ザハ・ハディド案の白紙撤回、巨額の建設費をめぐる国と都の攻防、そして過酷な工期に挑んだ現場の苦闘がありました。本記事は、archiclue.が2013年から追い続けた60以上のニュース記事を時系列で整理し、この巨大プロジェクトがいかにして形づくられたのか、その全貌を竣工から6年が過ぎた2025年現在の視点で再構成したアーカイブまとめです。
激動の記録タイムライン
1. 【2013年〜2014年】計画の始動と膨らむ懸念
ザハ案の決定直後から、規模の大きさと建設費への懸念が噴出。建築界の巨匠たちによるシンポジウムや、住民による立ち退き反対運動など、波乱の幕開けとなりました。
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2013.09.20:槇氏の問題提起を受けシンポ開催へ
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2013.11.28:批判を受け「22%縮小」へ舵を切る
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2013.12.05:施設の規模縮小、見直し案発表
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2014.01.07:総工費上限1699億円に設定
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2014.01.28:日建設計JVが基本設計に着手
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2014.03.25:政府と東京都、500億円の攻防
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2014.05.19:神宮外苑と競技場を未来へ手わたす会、署名開始
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2014.05.27:JIAが解体延期を要望
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2014.05.28:基本設計公表、開閉式屋根は「遮音装置」
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2014.05.29:基本設計案の発表ニュース
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2014.10.07:槇文彦、内藤廣らが登壇「新国立から東京を考える」
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2014.10.11:都営アパート住民の立ち退き問題
2. 【2015年前半】コスト膨張と政治的混迷
2015年に入ると、建設費が2,500億円まで膨らむことが判明。文科省、東京都、JSC(日本スポーツ振興センター)の責任の押し付け合いが激化します。
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2015.01.11:国立競技場、解体へ
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2015.01.11:自民党による無駄撲滅プロジェクトのヒアリング
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2015.06.12:舛添知事、新法整備に「憲法上問題」と苦言
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2015.06.25:文科省、建設費2500億円で最終調整
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2015.06.28:「戦犯は誰だ!」文科省と東京都の泥仕合
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2015.06.29:ロンドン五輪をも上回る巨額建設費の問題
3. 【2015年夏】激震の「白紙撤回」
7月17日、安倍総理(当時)による「白紙撤回」が宣言されました。安藤忠雄氏の会見、ザハ氏の声明など、世界中が注目する事態に。
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2015.07.17:【速報】安倍総理、建設計画の白紙撤回を表明
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2015.07.17:安藤忠雄氏、渦中の記者会見
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2015.07.19:IOC会長、計画見直しに理解
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2015.07.27:英紙「日本人のように無駄な建築にNOを」
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2015.08.01:ザハ氏声明「建設費高騰はデザインのせいではない」
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2015.08.02:迷走の問題点を識者が検証
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2015.08.07:五輪相と建築家・槙文彦氏が会談
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2015.08.11:ハディド案に安藤氏「技術的問題たくさんある」
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2015.08.14:舛添知事「同じ轍は踏まない」
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2015.08.20:ザハ案以外のコンペ案も建設不可ばかりだった?
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2015.08.22:五輪後の民営化プランに苦言
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2015.08.29:新提言「屋根を木造に」
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2015.09.02:霞ケ丘アパート立ち退き白紙要望
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2015.09.17:JIAがコンペで意見書提出
4. 【2015年末〜2016年】再公募と「隈研吾・A案」の決定
白紙撤回からわずか数ヶ月で再コンペが実施。「A案(隈研吾氏ら)」と「B案(伊東豊雄氏ら)」の一騎打ちとなりました。
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2015.09.18:巨大アーチ建設の苦労を振り返る
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2015.09.19:ゼネコンも怯む「過酷すぎる建設条件」
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2015.10.01:ゼネコン受注合戦の内実
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2015.10.02:「談合復活」まで囁かれる事情
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2015.10.16:白紙撤回への経緯と争点スタディ
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2015.11.03:大成建設に内定か
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2015.12.02:都の負担額は約395億円に
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2015.12.22:【決定】隈研吾氏らの「A案」に。和のスタジアムへ
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2015.12.23:なぜA案だったのか?工期短縮が決め手
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2016.01.09:「出来レース」の声も?選考の裏側
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2016.01.13:マツダスタジアム設計者が語る観客の一体感
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2016.01.16:隈研吾氏が会見「今なら心配ない」
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2016.01.30:吉岡徳仁氏がデザイン案公開
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2016.03.10:聖火台問題に隈氏が回答
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2016.03.25:聖火台の置き場なし?B案建築家が疑問呈す
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2016.07.19:隈研吾氏が込めたメッセージ
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2016.09.12:「有機主義」を掲げる隈研吾氏
5. 【2017年〜2019年】建設現場の死闘と完成
「工期厳守」の重圧の下、現場は動き出します。起工式、構造公開、そしてついに完成へ。
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2016.12.11:起工式、新完成予想CG披露
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2017.03.24:工事現場公開、輪郭が見え始める
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2017.07.20:スピード工事を可能にする「2つの秘策」
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2017.08.06:過労死を招いた過酷な現場実態
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2017.10.15:実物大模型で分かる最新技術
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2017.11.15:五輪後は「球技専用」に正式決定
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2017.11.17:異例の過労死対策、現場に医師待機
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2018.04.13:建設作業員が明かす「もうやってられない」現状
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2018.05.13:国産木材を使った屋根を公開
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2019.03.12:五輪まで500日、建設の現在地
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2019.12.02:【完成】東京オリンピックの聖地が誕生!
まとめ:建築アーカイブとしてのarchiclue.
2019年に竣工し、無観客という異例の開催を経て、2025年現在の新国立競技場は、日々のスポーツ興行や市民の憩いの場として、すっかり街の風景に溶け込んでいます。しかし、ここに至るまでの道のりは、単なる一建築物の「工事の記録」ではありませんでした。
それは、日本の政治決定のプロセス、巨大プロジェクトにおける経済性の担保、そして、人々の命を預かる建設現場の労働環境といった、この国の構造的な課題がすべて浮き彫りになった、生々しいドキュメンタリーそのものです。
完成から数年が経過した今、当時のニュースを読み返すと、そこには現在の都市開発や万博、再開発プロジェクトにも通じる「多くの教訓」が詰まっています。archiclue.に蓄積されたこれらの断片的な記録は、時を経てつながり、後世にこの激動の時代をリアルタイムで伝えるための「歴史的資料」となりました。
私たちがこのスタジアムの木漏れ日を仰ぎ見る時、その背景にあった無数の議論と、現場で流された汗、そして時代が選んだ「和」の形に想いを馳せる。この記事が、これからの日本の建築と都市のあり方を考えるための一助となれば幸いです。
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