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ブログ形式で、まちづくりや不動産、建築系の雑学話に加えて、自ら足を運んだ取材話も、不動産・建築の視点を持つ運営人(くふらて)が現地で撮影した写真も交えて気軽な文体で綴っています。

世田谷に江戸の農村?「次大夫堀公園民家園」で170年前の建築美と六郷用水に出会う建築旅

洗練された住宅街が広がる世田谷区・成城エリア。そのすぐそばに、驚くほど静かな「江戸」が残っているのをご存知でしょうかね。

今回、紹介するのは「次大夫堀公園民家園」です。そこに広がっているのは、170年前の静かな農村風景です。園内には熟練の大工が手がけた古民家が建ち並び、水のせせらぎが感じられる六郷用水も流れています。水の音に癒やされつつ、当時の暮らしに思いを馳せてみるのも、贅沢な時間の過ごし方かもしれませんね。

1.築170年超!成城の隣に眠る「本物」の歴史建造物

小田急線・成城学園前駅から住宅街を抜けて歩いていくと、ふいに現れる『次大夫堀公園民家園』。ここは、単に古い建物を並べただけの場所ではないのです。
昭和63年の開園以来、ここでは名主屋敷や民家、土蔵などが移築復原され、かつての水田や用水路(次大夫堀)とともに、江戸後期から昭和初期にかけての「農村風景そのもの」が再現されています。一歩足を踏み入れれば、世田谷がかつて農村だった時代の風景が広がっています。

次大夫堀公園民家園の建物

写真1

 
そんな民家園の中にあるのが「旧加藤家住宅主屋」です。(写真1)

安政2年(1855年)以前の建築と推定されており、なんと170年以上もの時を刻んでいます。世田谷区の有形文化財にも指定されており、単なる「古民家」という言葉ではくくれない、歴史的建造物としての存在感を放っていますね。

2.五感で感じる「農家の暮らし」と職人の手仕事

次大夫堀公園民家園の建物

写真2

 
まずは「旧加藤家住宅主屋」の縁側の様子です。

縁側が生み出す「内と外」の境界線がわかりやすいですね。

そして、現代の住宅ではアルミサッシが当たり前ですが、ここでは障子一枚だけです。この潔い仕切りが、庭の緑を室内に取り込み、心地よい開放感を生んでいるのかもしれませんね。冬の寒さは雨戸で凌ぐという、自然と共生する昔ながらの知恵が、この縁側から伝わってきます。

次大夫堀公園民家園の建物

写真3

 
次は室内の様子です。 (写真3)

建物の中へ入ると、さらに興味深い発見がありますね。

現代の住宅ではなかなかお目にかかれない、このダークカラーの梁や柱。長い年月を経たからこその独特の質感は、写真越しでもその重厚さが伝わってきますよね。

派手な装飾はないけれど、この潔い畳空間に身を置いていると、不思議と落ち着きました。

そういえば和室で寝泊まりしたことなんていつのことだったやら、と室内風景をみながらふと思い出したりもしましたね。

次大夫堀公園民家園の建物

写真4

 
広々とした和室のそばには、かつて家族が集まったであろう囲炉裏もありました。

実は、こうした古民家の囲炉裏で火を焚くのは、単なる暖房や調理のためだけではないのですよ。
昔はこういう囲炉裏で火を焚き、煙が家を包むことで、茅葺屋根の防虫や防腐をおこなっていたそうなので、ここも建物を守るために火を焚くような同じことを今もしてるかもしれないですね。

とにかく今で言えばダイニングルームですが、それだけでは言い切れない、170年の歴史が今に繋がれているのかもしれませんね。

次大夫堀公園民家園の建物

写真5

 
抜けるような青空に向かって、力強くそびえる茅葺屋根。170年前の人々も、同じようにこの屋根越しに空を見上げていたのでしょうかね。時を止めたような、穏やかな風景でした。

なお園内では、ボランティアの方々による藍染めや鍛冶(かじ)、機織りといった伝統的なモノ作りの実演が行われていることもあるそうです。かつて区内で実際に使われていた農具や生活道具が並ぶ空間で、職人の手仕事を間近に感じられるのは、歴史を肌で感じる、大人な散策ならではの醍醐味ですね。

3.水のせせらぎに癒やされる「次大夫堀」の物語

次大夫堀公園民家園の建物

写真6

 
民家園を歩いていると、さらさらと流れる川の音に気づくはずです(写真6)。

この川は、江戸時代に開削された「六郷用水(別名:次大夫堀)」を一部復元したものだそうです。かつてこの地域の田畑を潤した命の水とも言えそうです。水田風景と古民家がセットで見られるこの場所は、まさに都会のオアシスかも。

ちなみに、六郷用水(ろくごうようすい)とは、江戸時代初期の1611年、徳川家康の命を受けた小泉次大夫(じだゆう)によって開削された、多摩川北岸を流れる壮大な用水路です。狛江から世田谷、大田区へと至る約30kmに及び、かつては広大な水田を潤していました。設計者の名から「次大夫堀(じだゆうぼり)」とも呼ばれています。

次大夫堀公園民家園の古地図

出典:今昔マップ

 
こちらは、 今昔マップから拝借させてもらった地図です。

六郷用水(別名:次大夫堀)の話がでてきたので、今昔マップで古地図も見てみると、六郷用水は、掲載されている一番古い明治42年の地図にも今と同じ場所に記載があります。
しかも、赤く着色されたラインを辿ってみると、いまとだいたい同じ位置なのがわかりますね。

「次大夫堀公園民家園」は昭和63年の開園なので、古地図を見る限り、当時は今とは比較にならないほど、のんびりした農村風景が広がっていたのでしょうね。

地図

【地図】次大夫堀公園民家園
※クリックすると周辺マップと関連記事一覧が開きます。

お出かけのヒント:周辺の食事事情

このサイト的にはちょっと脱線気味の話ではありますが、散策を楽しんだあと、気になるのが食事事情ですよね。前に訪れた感じでは、周辺は静かな住宅街ということもあり、歩いていけるところで、これといった飲食店はそれほど多くありません。

強いていえば、園に隣接して「マクドナルド 多摩堤通り喜多見店」があるくらいでした。でもここなら小さなお子さんのいる家族でも気兼ねなく立ち寄れそうですね。ただ、しっかりとしたランチやカフェを楽しみたい場合は、駅周辺(成城学園前駅)まで戻ってから探すのが、選択肢も多くてよさそうでした。

次大夫堀公園民家園 基本データ

入園料:無料

開園時間:9:30~16:30

休園日:月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12/29~1/3)

所在地:東京都世田谷区喜多見5-27-14

アクセス:

小田急線「成城学園前駅」から徒歩約15分

またはバス「次大夫堀公園前」下車 徒歩約2分

駐車場:あり(有料・公園利用者用)

公式サイト:世田谷区ホームページ(民家園案内)

あとがき:リニューアルにあたって

最後に、この記事は、2023年に東京坂道さんぽで公開した建築話の内容をベースに、最新の現地状況や専門的な知見を加えてリニューアルしたものです。旧記事から読んでくださっている方も、初めての方も、世田谷に息づく歴史の深さを感じていただければ幸いです。(旧記事の内容もみたいというかたは個別でご連絡いただければ幸いです。データはありますので。)

archiclue.の関連リンク(近隣計画)

関連リンク(近隣の道路(坂道)について)

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